4号機以前の時代からスロットを打っている人なら、噂程度には耳にしたことがあるかもしれません。
それが、パチスロの裏物についてです。
令和の今となってはほとんど見かけることはありませんが、かつては裏物が出回り、損をする人や得をする人もいたようです。
この記事では、そんなパチスロの裏物について解説します。
パチスロの裏物とは
パチスロの裏物とは、結論を言えば、法律に違反して基板(ROM)を不正に改造したパチスロ機を指します。
現在ではほとんど見かけませんが、かつては裏物が出回っていた時期がありました。
詳細は後述しますが、もしパチスロの裏物が発覚した場合、警察により検挙され、パチンコ店は即座に営業停止ではなく強制的に閉店させられることになります。
裏物のパチスロ機は本来の挙動と異なり、機械割以上に出玉が爆発したり、逆に設定1を大幅に下回るほど出玉が見込めず、スランプグラフが右肩下がりになることもあります。
ただし、見た目や演出では正規品か裏物かの判別はつかず、ホール側や仕掛けた人物、打ち手が長時間プレイして初めて気づける場合があります。
パチスロ裏物の種類
パチスロの裏物は、大きく分けて2つの種類があります。
次には、それぞれの特徴についてご紹介します。
Bモノ
Bモノとは、メインロムのプログラムが改ざんされたもので、ホール側が裏物ロムの製作者に依頼し、特定の機種に取り付ける形で使用されます。
特徴と目的
ホール側が利益を出すために改造を行うもので、客にメリハリをつけるための仕掛けとして利用されていました。
- 連チャン性の強化
既存の機種よりも連チャン性能を強制的にアップさせ、あたかも「出している」ように見せる。 - 吸い込み(出玉の抑制)
一方で、設定に関係なく出玉が増えない仕様にして、確実に利益を回収。
ホール側の狙い
ホール側は、勝つ客と負ける客を極端に演出することで、ギャンブル性や射幸性を高め、客を呼び込む仕掛けを行っていました。
- 出玉感の演出
爆勝ちする客(アメ)を少数派に設定し、大多数の客(ムチ)は厳しい回収設定に。
この割合は、アメ2:ムチ8というバランスで行われることが一般的でした。
結果的に、ホール側は客をうまくコントロールしながら利益を確保していたのです。
Cモノ
Cモノは、Bモノにさらに攻略プログラムを追加搭載したタイプの裏物です。
特徴と仕組み
Cモノでは、特定の手順(攻略法)を踏まないと出玉を得ることができない仕組みになっています。このため、普通の客はその手順を知らずに負けてしまう一方、手順を知る人だけが大きく勝つことが可能です。
- ホールとサクラの連携
ホール側がサクラと組むことで、攻略法を知るサクラの客だけが出玉を得られるように設定し、他の一般客からは確実に利益を回収する仕組みとなっていました。 - 出玉率のコントロール
攻略法を実行できる人が限られているため、ホール側は出玉率を自由に調整しやすいのがCモノの特徴です。
一部のホールでは、Bモノの連チャン性だけでは満足できず、さらに利益を得るためにCモノを導入して営業していたケースもありました。
このようなホールでは、攻略法を知らない客が確実に負ける仕組みを利用し、不正に利益を得ていたようです。
裏物パチスロが流行していた背景
現在では裏物パチスロを見かけることはほとんどありませんが、4号機以前の時代には裏物が存在していました。
裏物が流行していた背景には、当時の規制が現在と比べて非常に緩かったことが挙げられます。
一部のホールでは、警察の検査の日だけ正規の形に戻し、検査終了後には再び裏物を稼働させるという手口が行われていたとされています。
このような行為は、警察関係者との根回しや黙認があったからこそ可能だったと言われています。
裏物が一部で許容されていたのは、当時はギャンブル依存症の問題が現在ほど認知されていなかったことも背景にあります。
規制や監視の目が緩く、ホールと関係者の間で「暗黙の了解」のような形で運用されていたのです。
裏物パチスロの具体的な特徴3選
先ほど裏物パチスロの種類についてご紹介しましたが、ここでは裏物パチスロの主な特徴を3つ取り上げて解説します。
永遠にボーナスが来ない
裏物の特徴の一つとして、特にAタイプの機種に多い「永遠にボーナスが来ない仕様」が挙げられます。
Aタイプの機種には天井機能がないため、裏物を仕込むことで以下のような状況が生まれます
ボーナスが永遠に当たらない。開店から閉店まで回し続けても、一度もボーナスを引けません。
ジャグラーを例にすると、通常プレイではチェリーでの重複抽選がありますが、裏物では3000G回しても「GOGOランプ」が光らないという極端な状態になります。
裏物が仕込まれた場合、機械割が0%になるため、すべてのメダルがホール側の利益になります。設定1よりもさらに下回る「超鬼回収台」として機能します。
32G以内に必ずボーナス!? 超高確率仕様の裏物
裏物の中でも「32Gver」と呼ばれるものは、特定のタイミングで32ゲーム以内にボーナスが必ず当たるように仕込まれた特殊な仕様でした。
この裏物はホール側が客寄せのために意図的に設定することがあり、非常に強力な連チャン性能を持っています。
高確率ゾーンに突入すると、うまくいけば閉店までその状態が続き、4号機以前の時代であれば万枚も十分に狙える機種として人気を集めていました。
ただし、高確率ゾーンが途中で終了する場合もあり、常に連チャンが保証されるわけではありません。
「32Gver」は、小役の回りが通常よりも悪く、通常時に1000円で20ゲームも回らないような調整がされていたことが特徴的でした。
そのため、見た目では大連チャンが目立つ台として注目を浴びる一方で、通常時には大きな投資が必要になる仕掛けが隠されていました。
ホール側にとっては「ちゃんと出していますよ」とアピールする絶好の方法であり、客寄せ効果は抜群でした。
しかし、翌日にはボーナスが全く出ない裏物を仕込むか、単純に設定1に戻すなどして、ホール全体の収支を調整していたと考えられます。
このような手法は、ホールが裏物を利用していた当時の象徴的な営業スタイルと言えるでしょう。
特定の小役を引いたら潜伏を経てボーナス告知
裏物の中には、通常の設定6以外で「出玉を出している感」を演出するために使用されたものもあります。
その一例が、特定の小役を引くと32G以内にボーナスが告知されるというタイプの裏物です。
このタイプでは、主にチェリーやスイカといった特定の小役を引いた際に、ボーナスが必ず告知される仕様となっていました。
つまり、チェリーやスイカを引けばボーナス当選率が100%になる仕組みです。
これにより、プレイヤーは小役を引くだけでボーナスに繋がるという「謎当たり」を体験し、通常の機種にはない連チャン性能を楽しむことができました。
当時の裏物がどのように設置されていたのか、詳細は不明ですが、もしチェリーやスイカを引くたびに謎当たりが発生する台があれば、このような裏物が仕込まれていた可能性が高いでしょう。
ただし、チェリーやスイカの出現率まで不正なロムで操作されていたかどうかは不明です。
もしAタイプの機種でチェリーやスイカでのみボーナスが当たる仕様だった場合、ボーナスの単独抽選が排除されていた可能性もあります。
こうした仕様は一見魅力的ですが、不正改造によるものである以上、現在の厳格な規制下では考えられない裏物の特徴と言えるでしょう。
実際に存在していた裏物パチスロ機種3選
かつて裏物として話題になったパチスロ機種を3つご紹介します。
これらの機種は、裏物特有の改造が施され、大きな連チャン性能や特殊な挙動で一部のホールを賑わせていました。
沖スロ系機種
沖スロ系のスロットは、そのゲーム性から裏物が仕込みやすい機種として知られています。
特に、32G以内にボーナスが来るという裏物は、沖スロの特徴である「32G以内にボーナスが来るかどうか」というポイントと一致しており、初見で裏物かどうかを見分けるのは非常に困難です。
例えば、「南国育ち」や「ハナハナ」、「シオサイ」などの人気機種には、実際に裏物が仕込まれていたという話もあります。
これらの機種では、高連チャン性能を持つ一方で、コイン持ちが悪くなる傾向がありました。
その結果、ボーナス初当たりまでに軽く10万円が消えるほど吸い込みが激しいという特徴も見られたのです。
このような裏物は、プレイヤーにとって夢のある一撃性能を提供する反面、通常時のリスクが非常に高く、冷静な立ち回りが求められる機種でした。
裏物特有の挙動を考えると、当時の沖スロファンにとっては一種の賭けとも言える存在だったでしょう。
初代北斗の拳
初代「北斗の拳」は、4号機時代を象徴する名機であり、あまりの人気ゆえに裏物も多く出回っていました。
裏物として知られる例には、バトルボーナス(BB)の継続率が途中で変動するタイプが挙げられます。
この裏物では、バトルボーナスの初回継続率が100%(単発を回避)で、2回目以降は66%といった変動仕様が存在したのではないかと推測されています。
さらに、バトルボーナス前の小役(ベルやリプレイ)が全てカットされるタイプも一般的でした。
この仕様では、ゲーム中の小役が排除される代わりに、大当たり中の継続率が高く設定されるという特徴があり、連チャン性能をさらに強化したものとされています。
ただし、北斗の拳は正規のスペックが非常に完成度が高く人気があったことから、裏物の利用は一部に限られていたようです。
また、この機種には4号機時代では珍しく「天井機能(通常時1999G)」が付いていたため、裏物を仕込むことで天井が発動しないリスクをホール側が嫌い、使用を避けるケースも多かったとされています。
こうした背景から、初代北斗の拳は正規スペックの魅力で勝負していたホールが多かったものの、一部では裏物による極端な出玉性能を追求した例も見られたのです。
ジャグラー
ジャグラーシリーズは令和の時代でも高い人気を誇る機種ですが、そのシンプルなゲーム性とAタイプ特有の天井がない仕様から、かつては裏物が仕込まれやすい機種でもありました。
実際に仕込まれていた裏物の内容として、以下のような仕様が知られています。
一つは1G連が発生しやすいタイプで、ボーナス終了後にすぐ再びボーナスが当たる仕様が特徴です。
さらに、ビッグボーナス中に7が揃うと1G連荘が確定するタイプもありました。
そもそも通常のジャグラーではビッグボーナス中に7揃いは発生しないため、この挙動自体が不正改造の証拠となります。
また、小役が連続で揃うとボーナスが確定する仕様も見られ、通常のゲーム性を大きく逸脱した挙動が仕込まれていたことが分かります。
一方で、営業中にボーナスが一切来ないパターンも存在しました。
このような場合、「GOGOランプ」が一度も光らず、客に絶望的な回収を強いる仕様となっていました。
ジャグラーシリーズは「GOGOランプ」が光ればボーナスを告知するというシンプルなゲーム性で、初心者から熟練者まで幅広く楽しめる機種として知られています。
しかしその分、裏物を仕込むことで目立たない改造が可能だったため、特に悪用されやすい機種だったともいえます。
裏物パチスロが激減した理由
裏物は、パチスロ5号機時代の到来とともに激減しました。
その背景には、射幸性の高まりに対する警察の取り締まり強化や、出玉規制の導入といった要因が絡んでいます。
4号機時代には、ビッグボーナスで一撃711枚獲得や、ATで一撃5000枚以上の出玉が可能な機種が数多く存在していました。
しかし、これらの爆発的な出玉性能が規制の対象となり、ホール側があえて裏物を仕込むことで規制に違反すると、すぐに発覚してしまうリスクが高まりました。
その結果、ホールが営業停止や閉店といった致命的な罰則を避けるため、裏物を導入する動きが大幅に減少していったのです。
ただし、裏物が完全に姿を消したわけではありません。
5号機時代以降、特に6号機が主流となった現在でも、一部のホールがリスクを承知の上で裏物を仕込んでいる可能性があります。
例えば、ジャグラーのような人気機種では、限られた地域や特定のホールで、裏物が使用されているという噂が絶えないのも事実です。
規制が厳格化された現在の環境では、裏物の存在はごく一部に限られるものの、その可能性が完全にゼロになったわけではないという点は注目に値します。
まとめ
今回は、パチスロの裏物について解説しました。
4号機以前の時代には、パチスロ機に裏物が使用されていたケースがありました。
これらは、主にホール側が利益を上げるために仕込んだものと言われていますが、打ち手にとってはその確証がないまま打つことがほとんどだったでしょう。
特に、ジャグラーのような機種では裏物が仕込まれていたことがありました。
しかし、実際にそれが裏物かどうかは、実際に打ってみなければ分からないというのが実情でした。
現在では、令和という時代を迎え、規制や取り締まりの強化により、裏物は表舞台から姿を消しています。